電話の話・その2
まったくもって電話が嫌いです。
まず、かかってくるのがいやです。かけてくるひとは、こっちがそのとき何をしてるのかも知らないくせにこっちのやっていることを無理矢理止めようとするわけです。あなたにわたしの行動を妨げる権利があるというのでしょうか。しかも無理な時間にかかってくる電話は、たいがい内容も無理なものが多いです。
その点mailはいいですね。出す方は「一応送っときました。あなたに時間のあるときでいいですから、もしよかったら読んでくださいね」という、真摯な態度に好感が持てます。petが運んでくれれば、なおグッドです。
全く同じ理由で、かけるのも嫌いです。もしわたしがその電話をかけたせいで、あなたが今、思いついて言おうとしていた最高級のギャグを放つタイミングを逸してしまうかもしれません。ギャグはその8割がそのタイミングで決まります。タイミングを逸してしまったギャグは賞味期限の切れたまんじゅうより悲惨で、つぶしがききません。「またいつか使えるときがあるだろう」なんて思って使えるためしはないのです。チャンスの神様には前髪しかない。という格言をあなたは知っているのでしょうか?しかし前髪しかない神様の顔を想像すると、かなりインパクトがありそうですね。ボクは好きです。
ハナシがそれてしまいましたが、電話という奴はとにかく、その存在自体が礼儀を知らないやつなのです。
そしてその「礼儀知らず」を、なんと持ち歩けるようにしてしまったのがあの携帯電話です。
電車の中でかけるどうしょうもない女子高生、とか、そういうことを言っているのではありません。あなたはそうまでして、人のじゃまをしたいのか。ということです。しかし人間というのは弱い生き物です。あなたは携帯を持っている。わたしは携帯を持っていない。それだけの理由が、人のココロを動かすのです。すいません。買ってしまいました。
かかってくるのは嫌いです。しかし、どうしてせっかくの携帯にだれも電話をかけてきてくれないのでしょう。こうして「待ち」の状態にあるというのに…いや、いいんです。「まち」ではなく「ぐち」になってしまいました。
そしてわたしは、携帯電話を持ってディズニーランドへ行ったわけです。理由はカンタン。はぐれるからです。特にわたしのように人がスプラッシュマウンテンに行っている間にホーンデッドマンションとダイヤモンドホースシューレビューに行きたいようなタイプの人間はとかく別行動を余儀なくされるものです。待ち合わせ、といっても時間がしっかり読めるものではありませんので、携帯はかなり便利です。まあ、トランシーバーですね。まわりを見るとおんなじように携帯をもってミクロアドベンチャーの列についている人がかなりいます。しかし、考えてみるとディズニーランドというところは、夢と魔法の王国であるわけで、外界とは遮断されているところがいいところなわけです。外の建物もなるべく見えないように設計されていて、一歩中に入ればここが浦安だということも忘れてしまえるのがいいところなわけです。公衆電話もあることはあるのですがなるべく見えないところにひっそりと置かれています。タバコなんかもホントは売店に売っているのですが言わないと出してくれません。その魔力をやすやすと打ち破ってしまうのがこの、携帯電話だったのです。
しかし、いるんですね。こんなところにきてまで仕事の電話をしてるやつ。やることもなくぞろぞろ列ついて歩いているうちに、ふと大事なことを思い出したのでしょうか?それとも無粋にも休みを取ってるのに追いかけてきたのでしょうか?どっちにしても、この携帯という奴は、魔女マレフィセントが考え出したとしか思えませんね。全く…
そんななかで、ふとこんな電話を聞いてしまいました。
携帯電話をかけたそのひとは「あのう、恐れ入りますが」と言って相手を確かめました。
しかし、どうやらまちがい電話だったらしく、
ふつうなら「あっ、失礼いたしました」と言うところ、そのひとは「あっ、恐れ入りました」と言いました。
よっぽど恐れ入って電話をかけたのでしょうが、不作法な電話が多いこのご時世に、最初から最後まで恐れ入っているこの態度には深く頭の下がる思いがしました。
「恐れ入りました」
(97.9.28)